◆ プログラム詳細
守谷京子のトレーニング養成講座では、3年間720時間をかけ、下記プログラム内容をグループの成長プロセスに合わせ、順序不同にはなりますが提供されます。
ゲシュタルト療法のトレーニング・プログラムについて
1.理論と実践
トレーニング・プログラムの目的は、セラピーの基本を、しっかりと身につけてゆくことです。トレーニング・プログラムでは、セラピーの理論と実践との関係に特に力点をおきます。レクチャーに加えてデモンストレーションを行い、受講者は各種セラピーの諸概念を個人的体験を通して学んでゆくのです。二人または小グループで、特定の概念についてワークをします。
またセラピストの指導の下に、受講者がお互いにセラピスト(サイコセラピーを提供しサポートする人)、ファシリテーター(ブレスワークの提供者)、クライエント(受講者)になり、ワークをします。そうして、自分自身のやり方なり、自分に最も合ったサイコセラピーをみつけて欲しいのです。結果、自己発見、自己成長、自己開放が促されるでしょう。
2.プログラムについて
受講者の個人的成長は、デモンストレーションや体験的学習の結果として起こってくるものです。
第一年度は、主にゲシュタルト・セラピーを中心に、「気づき」に焦点をあてていきます。自己発見、自己成長、自己開放を目指す時、自分自身に気づくということは、基本になります。また三年時の受講者と共にチームを作り、ホロトロピック・ブレスワークのファシリテーターとして、グループに提供することで「自分は誰であるか、他者とのコンタクトはどのようにとっているか」を、学びます。プロセスの過程の中で必要に応じて個人ワークをしてゆきます。
第二年度のプログラムは、グループ療法の流れを中心として勉強します。引き続きトレーニングによる個人的成長が期待されます。受講者は、グループの提供役(ファシリテータ)として、その技術を向上させ、グループ力学の知識を高めてゆきます。グループ開発やグループ運営などの理論および関連諸概念をとり入れながら、ゲシュタルト療法やその他の療法の理論と実践をグループ療法に応用していくようになるでしょう。
第二年度のプログラムは、グループのそれまでのプロセスによって、内容が異なっていきます。例えば、あるグループは、家族ワーク、またあるグループは、ディソンドバート(自らのいまだ知らない自分の人格を自分のものにする)等々。その年々で異なった展開をゆきます。
第三年度のプログラムは、個人的成長のためのワークとともに、そうしたワークを深く見つめ監督していくということに焦点をあてます。やはり、第二年度と同じく、プロセスによって展開の仕方が異なります。
三年間を通して、形を変えてゲシュタルト・セラピー、ホロトロピック・ブレスワーク、カフナ
R・サイエンス等の理論に基づいた体験とセラピーをしてゆきます。
セラピーのプロセスに於ける受講者の個人的成長と、ゲシュタルト・グループ療法での成長過程を注意深く見守ります。同時に自ら参加する機会をもつために、トレーニング時間の大部分が費やされることになるでしょう。セラピーの強力な効果を理解するには、一人一人の体験をおいて他にはありません。受講者は、自分の知覚の盲点や投射のメカニズムをすっかり明らかにしておかなければ、個人としても、セラピストとしても自立することはできません。「テクニックのうまい人」というだけでは充分ではないのです。
3.トレーニングの長さ
トレーニング・プログラムとして、3、4週間の集中プログラムを提供するところもありますが、新しい概念、手段、態度、治療の形態等を吸収して自分のものとするには、かなり長期間のトレーニングが必要と思われます。そして、長期のトレーニングでは、時間自体がトレーニングの一要素となります。受講者は、長期間、毎週一回のクラスと週末のワークショップに通うことになります。
このプログラムは、段階的に組まれています。ですから、セラピストになりたい方、個人的により成長を望む方たちは、第二年度、三年度のプログラムへ申し込んで下さい。
人間として、またプロの治療者として成長するといっても人それぞれに、その人のリズムやタイミングというものがあります。ですから、初年度のトレーニングを終了した時点で、二年度に進むために必要なレベルの自己解決を得られなかった方は、初年度を再受講するか、または、トレーニング・プログラムの他に、個人ワークをお勧めするかもしれません。これは「落第」とは考えないで下さい。各々個人の必要性ならびに成長速度の違いに照らした「適合」と考えて下さい。
トレーニング・プログラムの内容
次にトレーニング・プログラムの内容を紹介しましょう。
いろいろなテーマを週一回のクラス、あるいは週末研修で取り上げていきます。発見という形で学習する精神こそ、トレーニング・プログラムの学習の基本です。個人的に気づきの実験をするという宿題もあるでしょう。
1.第一年度
1.第一年度のプログラムの主な目標
「気づき」はゲシュタルト療法の中核となる概念です。ゲシュタルト療法の基本的信念および実体験は、まさに「気づき」への信念であり、その体験なのです。「気づき」それ自体が、自己成長と自己改革の原動力なのです。
『気づきは、コンタクトし、感覚し、興奮するということによって特徴づけられ、そのままゲシュタルト形成に繋がるものである。』(パールズ・ヘファリンおよびグッドマン)
グループによっては、第一年度のプログラムが、第二年度、三年度へと継続もしくは、三年間を通して、全体的に学ぶ場合もあります。
2.学習項目
Ⅰ 気づき
1.気づきの定義と気づきの訓練
a. 図と地の形成
b. 気づきの領域
c. 今、ここでということ
2. 気づき・・・・外部領域(外なる気づき)
・聴覚(聞く)
・味覚(味わう)
・触覚(触れる)
・嗅覚(嗅ぐ)
・視覚(見る)
3. 気づき・・・・内部領域(内なる気づき)
・意識的な体の気づき
・体内各部の内的な気づきへの探検
・気づきの表現
・情緒表現に関連した体の気づき
(憎しみ、怒り、悲しみ、愛、性的快感、喜び、恐れなど)
4. 気づき・・・・中間領域
・空想の世界
・想像する・計算する
・予想する(未来)、思い出す(過去)
5. ボディワーク(体を動かす)
『体は、決して嘘をつかない。その健康状態、顔色、姿勢、バランス、動作、緊張度、活力等すべてその主人の現状を表現している。』体内の固定化した筋肉のパターンが、その人の現在のあり方にとって最も重要なものなのです。その人の生活態度と固定化した筋肉パターンは、相互に影響しあい、促進しあい、助け合っているのです。『からだとは、生きていくということについて、頭が考えたこと、心が感じたことをもとにして書いた設計図に従ってつくられた建物のようなものだ。』(引用・・・『からだは語る』クルツとプレステラ共著 1976年)
・ボディワークの定義づけ
・緊張、疼痛、不快部位などを明らかにする
・ブロックされやすい部位
目、顎、首、肩、横隔膜部、腰、臀部、そけい部、膝、腓腹筋(ふくらはぎ)、足部、くるぶし
Ⅱ コンタクトとコンフルエンスの境界線
1. コンタクト(接触、つながり、出会い)
・定義
・コンタクトの過程(図と地の現象)
・支持機能を通じて、境界線を体験する
2. コンタクトの諸相
・コンタクト(接触)と退却のリズム
・ゲシュタルト形勢とゲシュタルト崩壊の柔軟性
・コンタクト支持機能
・コンタクトへの感覚の利用
・終結・・・未完成の仕事を終える
・環境支持と自己支持
3. コンフルエンス(混沌、融合、未分化)
・機能的コンフルエンス(有益な場合)
・非機能的なコンフルエンス(無益、有害な場合)
Ⅲ コンタクトの妨害
1. ゲシュタルト理論における「異常」もしくは「神経症」の概念
2. 成長への障害
3. 障害の処理
4. 抵抗を処理する治療原則
Ⅳ 責任と自己支持(自立)
1. 責任
・責任という言葉
・責任の用件
・責任の放棄
・責任を取ること
2. 自己支持
自己支持を学ぶには
・環境にコンタクトする
・障害や妨害を処理する
・分離した自己を統合する
Ⅴ イントロジェクション(うのみ、とりこみ)
1. 定義
2. 環境を自己に取り入れる
3. うのみ的行動
4. 同化・・・うのみしたものを吐き出す
Ⅵ リトロフレクション(反転行動、自己攻撃)
1. 定義
2. 抵抗としてのリトロフレクション
3. リトロフレクションの現われ方
4. リトロフレクションの体験学習
Ⅶ プロジェクション(投射)
1. 定義
2. 機能的プロジェクション
3. 非機能的プロジェクション
4. プロジェクションの機能
5. プロジェクションの前提条件
6. プロジェクションを自己同化する
Ⅷ 分極性
1. 定義
2. 創造的無関心およびゼロ地点
3. 対立関係
4. 分極を統合する
Ⅸ グループ・ワークについて
1. グループを気づきの道具として利用する
2. フィード・バック(情報交換)
3. グループ内の人間関係
4. 個人療法とグループ療法
Ⅹ 復習
Ⅺ 評価
2.第二年度
1.第二年度のトレーニング・プログラムへ進むための要件
1. 第一年度のプログラムを完了した者
2. 気づき、責任性および個人意識に関する理論と方法に相当の知識をもつ者、つまり、「個人的な未完成の仕事」がかなり解消され、人間的に安定性をもつ者 第二年度に進むためには、「今、起こっているもの」を取り扱うに際し、充分な人間関係の深さを示し、強力な妨害にも左右されないことを示す必要があります。
2.第二年度プログラムの主な目標
全体として、第二年度のトレーニング・プログラムの目的は、受講者が一人の相手、もしくはグループの人々を扱う能力を開発しようとすることにあります。それにより、自分自身と自分を取りまく人々について、また環境とのかかわり方などに関する知識を広げていくことができるのです。同時にリーダーまたはファシリテーターとして、自分自身の気づきも広げていくのです。リーダーは、テクニックをうまく操るのではなくて、捉われない広い心で臨むということがわかると思います。
第二年度のトレーニング・プログラムは、グループの成長プロセスにそって展開されるので、必ずしも下記の内容になるとは限らないことをご了承ください。また、第三年度に継続してゆく場合もあります。
3.学習項目
Ⅰ ファシリテーター・リーダーの側から見た気づきのモデル
1.ファシリテーター(受講者)が学ぶもの
①クライエントの目に映る変化を観察する
②声の調子・声の質の変化を捉える
③そうした観察によって得た反応をどのようにしてクライエントに有益な情報にしていくかに気づく
④長時間の曖昧な状況に耐える
Ⅱ ゲシュタルトの「ワーク」
ゲシュタルト療法は、クライエント(依頼人)とセラピストという関係を考えています。クライエントとセラピストが、その関係でいる間は、いくつかの明白な側面がみられます。
1. コンタクト
クライエントとセラピストというコンタクト(つながり)の性格と特徴
2. 契約
契約を結ぶことの本質とその仕方
契約を結ばずにセラピーするということ
3. 人間関係
4. 干渉(妨害)
5. 完了
(これらのどの段階も改良させうるのであり、その充分な発展のためのテクニックについて、議論し、実験し、練習をしていきます。)
Ⅲ ゲシュタルト・グループ療法に於ける技術
1. 始め方
2. コンタクトと契約
3. フィード・バックと危険性
4. グループ・ワーク
5. 一人一人の進行役(ファシリテータ)としての技術を高める
6. グループの共同指導の技術
7. グループ力学とグループ運営に関する諸理論と実際
Ⅳ 復習
Ⅴ 評価
3.第三年度
第三年度のプログラムの詳しい内容は、受講を認められた方々の要求や技術・得意とするところや弱点などに大きく依存します。
一般的に言って、このプログラムに入る為には、自己の個人的成長や自己への気づきの為に、ゲシュタルトやその他のセラピーの考え方を活用し、また、他の人々の成長を促すために、こうした知識を応用できる能力を示すことが必要です。
受講を希望される方は、様々な人々と、強力なる「今、ここで」のコンタクトをもてるだけの自己明晰性、柔軟性を示すことが必要になります。同時に、グループに対し、また、グループ運営に対し、すぐれた感性を持って欲しいものです。更に他者に起こる強烈な感情に立ち向かうべく、人間的、情緒的な対応と慎重さを心得ていなければなりません。
ゲシュタルトに関する参考書
創始者フレデリック S.パールズの書を中心に
1) Frederick S. Perls : Gestalt Therapy
Verbatim,Moab,Utah Real People press,1959
2) Frederick S. Perls : The Gestalt
Approach,Eyewitness to Therapy.
Ben Lomond,California, Science & Behavior Books, 1973.
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